クリスマスというのはいつでもみにくい。
 かがやきに覆われ人々が馬鹿になるそのとき、
 美しい祭が捏造される。

 クリスマスソングは嘘つきどもの歌。
 惑わされてうかれた人々が
 その誕生をお祝いする
 〈聖なる王〉などどこにも生まれていないのに、
 やけにきらきらしい歌声へと人々が強制される。

 サンタクロースがやってくるのは金持ちの家だけで、
 その陰では世にもみにくい商人どもが
 金儲けの絶好のチャンスに両目を残忍に光り輝かせ、
 まぼろしの麗しい子供を人質にとって、
 あさましく金を出せと脅しているだけだ。

 クリスマスのなかに神はいない。
 それは最も神が留守になるとき。
 痛ましい悲しみのとき。

 返して下さい、わたしたちに、神様を。
 そのためならわたしたちは何でも差し出すでしょう。
 人々がどうしても買い戻したいのはそれなのに、
 それだけはどの店にも売っていない唯一の、
 ほんとうのクリスマスプレゼント。
 永遠に永遠に手の届かない最高級のクリスマスプレゼント。

 誰があなたに高値をつけた? 
 どんな金持ちが目の眩むような巨額を支払い、
 すばらしい子供であるあなたを攫っていった? 

 裏切られたかぎりもなく醜悪ないつわりの祭、クリスマス。

 しかしそれは長くは続かない。
 コインの輝きはすぐにうすぐらく曇りはじめる。
 クリスマスの魔法が解けると、
 プレゼントは季節外れの薄汚いガラクタに戻る。
 陰鬱な重苦しい色に変わる。
 それを見ている人の目もうすぐらく曇ってゆく。
 白けたメタファーについてのよく知られた話だ。

(『〈知〉という白痴の悪霊たち 』より)